伝統にこだわる若い国~ヴァヌアツ共和国~

「ヴァヌアツってどこにあるの?」 とよく聞かれる。「南太平洋のニューカレドニアの北だよ」と答えると、たいがいの人は「ああー」と声を発して、なんとなく位置関係を把握しようと努める。
南太平洋はメラネシア、ミクロネシア、ポリネシアと3つのネシア圏にわかれ、小さな国が点在している。ヴァヌアツはメラネシア圏にある。
メラネシアで名前が通っている国・地域は少ない。というよりほとんど知られていない。ただし、あるヒントなりを聞けば多くの人が「ああ、そこがそうなんだね」と実は知っていることが多い。例えば「天国に一番近い島」(森村 桂 著)というヒントを与えると、ニューカレドニアと返ってくることが多い。また、ヤコベッティの映画「世界残酷物語」やジェームス・ミッチェナーの小説「南太平洋」の舞台となったのはヴァヌアツだよ、と語りかけると、「ああ、そこなんだ」とすでに知識がインプットされていたりする。さらに、太平洋戦争で餓(ガ)島として知られ、日米間の最初の激しい地上戦となったガダルカナル島はソロモン諸島にあるんだと話すと、「うんうん」と相槌をうってくる。(若い世代いは映画「シンデットライン」の舞台の方がわかりやすいかも)
このように「ああ」とか「うんうん」とか「おお」とかの感嘆詞をともなって思い出される場所が、実はメラネシアなのだ。
ここではヴァヌアツ・タンナ島を紹介する。
同国は1980年にフランスと英国から独立した新興国の一つだ。二国の共同統治の植民地時代はニュー・ヘブリデスと呼ばれていた。Y字型に約80の島々から成り立っている。人口は約20万人で、公用語は英語、仏語、ビスラマ語だ。
ご存じの人もいるかもしれないが、ヴァヌアツが発祥の地で現在、世界的に行われているものとして、「バンジージャンプ」がある。現地ではランドジャンプという。またジュゴンと一緒に泳ぐことができる海もあるほか、活火山から溶岩が吹き出す様を見学できる島も多い。
タンナ島は同国の最南端に位置しており、もっともニューカレドニアに近い。活火山として有名なヤスール火山もあるが、昨年夏から活動が急速に衰えており、激しく溶岩が吹き出す様子は見られなくなった。
伝統文化も色濃く残っている。島の西南部にヤケル村があるが、ここでは男性はペニスケース(ナンバスという)、女性はさご椰子の繊維で作ったスカートを身につけているだけだ。
また、村と村の友好を保つために行われている伝統的な祭り「トカ」も毎年、執り行われており、カラフルなコスチュームに身をまとった女性たちの姿が見受けられる。

近隣の村々の平和を確かめ合うトカ祭。ナカマルと呼ばれる広場で着飾った女性たちの踊りが繰り広げられる

タンナ島ヤケル村では昔ながらの半裸姿の暮らしが続く

トカ祭りのクライマックス。ブタは棍棒で殴り殺される。流れ出る血は大地を浄めると信じられている

トカ祭りでおどけながら広場に集団を先導しながら躍りる道化役。各村への伝統飲料カバとブタがお土産として渡される

メラネシアの子どもたちの目はくっきりとして愛らしい

ヤケル村の子ども。狩りのまねごとで弓さばきの感を養う。おやつには弓で野鳥を仕留めて食べるため遊びではない

ナンバスと呼ばれるペニスケースを身につけ伝統的生活をする若者。しかし村を出るときはジーパンにTシャツに着替える