第23話 脚立以前の話その2 不法侵入!?

今なら絶対に許されないことだけど、まだ当時はおおらかな時代だった。

校舎の玄関から勝手に教室に向かおうとしたところ、職員から呼び止められた。

「何か御用ですか?」

「今、朝日新聞の入社試験中ですので、学校の写真を撮らしてもらいます」と断りも無くずんずんと中に入っていった。

「困ります、それは困ります」という後ろからの声を無視して(というより、余裕がなかった)、目に付いた教室の扉を開いて授業風景の写真を撮り始めた。

担任の先生は、はじめキョトンとしていたが、私が「入社試験の最中です」と話すと、納得したのか、何もいわずにそのまま授業を続けた。

それから間もなくして授業終了のチャイムが鳴り、子供たちは一斉に教室の外に駆け出して行った。私も遅れずに後をついて行くとそこは屋上で、バスケットボールのゴールがあり、背景にはマリオンや銀座の建物がそびえていた。

バスケに熱中する子供たちと銀座の街並み。私は写真がわからないまでも、とても面白いシーンに思えた。

後輩に教わった通り、露出を間違わないことに神経を集中させて、ピントを合わせてパシャパシャと撮りまくった。三十六枚撮りフィルムも終わろうとしていたので、時計を見ると集合時間まであと五分ほど。急いで学校を後にしなくてはならなかった。

帰りがけに、とりあえず呼び止めた職員に「ありがとうございました」と声をかけ、銀座・マリオンに駆けていった。

今なら学校を舞台にした血なまぐさい事件もあり、勝手に入り込むことなんか許されない(もっとも当時も駄目だったのだろうけど)。警察に「不審者進入」と一報され、入社試験どころではないはずだ。もちろん、試験は不合格間違いない。

ともあれ、一眼レフ初体験の私は、この日の実技試験に合格、最終面接まで駒を進めることになったのだが、役員面接であえなく撃沈。

「好きなカメラマンは」の問いに「ロバート・キャパです」と答えたまではよかったのだが、「キャパのどの写真が好きですか?」に何も答えられなかった。もっともこの受け答えだけで不合格というわけではなかったと思うが、当時の私の写真の知識はこの程度だった。

ただ、何となくキャパや沢田教一にあこがれ、戦場カメラマンになりたかったのだった。朝日を受験したのは、年齢制限にひっかかっていなく、英語以外の語学(ドイツ語)で受験でき、事前の作品提出がなかったという理由だけだった。一発試験でカメラマンになろうとした私も私だけど、翌年に再び受験した私を合格にする朝日も朝日だなあ、と思うのである。